声

ふと耳をすますと、円柱の建物の中から何者かがヒソヒソと喋っている声が聞こえる。
なぜだか気になって冷たいコンクリートの壁に耳をぴたりと押し当ててみると、
やはり誰かが何かを喋っている。
建物のまわりをぐるりと一周してみるも入り口らしきものはない。
誰が、どのようにして入ったのか気にはなったが、約束があったのであきらめて立ち去ろうとすると、扉も窓も何もない壁から手がにょきりと飛び出してきて、私を円柱形の建物の中につかみ入れた。
建物の中は真暗闇で、さっきまで聞こえていた声は聞こえず誰もいない。
暗闇に一向に目が慣れないまま立ち尽くしていると、外の方からさっきと同じ声の何者かがヒソヒソと喋りだした。
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