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時間の鍵

密やかなもの、小さなものに惹かれます
たとえば、雨
総体としての雨ではなく
集合体のなかの小さな個である雨粒のほうにより惹かれます

空であると、漂う大きな雲の隙間に消えそうになっている小さな雲

砂浜にひとつ
きらりと光る硝子の破片

世界を構成する要素としては極小で、取るに足りないもののようであっても
何か心に響く小さくとも意味があるもの

耳をくすぐる囁き声
水面に無数に揺らめく光のプリズム
掌のうえで溶ける小さな雪片

すぐに忘れてしまうこと
ノートに記された見覚えのない落書
街灯の光
蛍光灯に群がる羽虫の羽音
遠くで響くサイレン
名前を持たぬ小さな星々の瞬き
冷たい風に踊る紙切れ

口にすると陳腐になってしまう思い

それら、
すべてを包み込む密やかな時間の鍵。





テーマ : 散文
ジャンル : 小説・文学

Tag:散文・物語  comment:0 

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Akira.K/Artsite diary

Akira Kawashima

Author:Akira Kawashima
 

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