最後の蝶
真夜中、迷い込んだ異国の街。
見ず知らずの美しい女が彼を呼び止め、自らの家の書架へと導き、そこで見覚えのある一冊の本を手渡した。
彼が「私も同じものを持っています。」と告げると、彼女はその本を開き、真ん中あたりのページを無言のまま指し示し、小さく微笑んで見せた…
そこで、不意に自分の寝室に舞い戻った彼は、今見ていた出来事が夢であった事を知る。
記憶にはないけれど、彼女をどこかで見かけた事が現実にもあったのかも知れないな…。
そうぼんやりと思いつつ、彼は、いつものように窓を開ける。
そうだ、あの本のページ。彼は、夢の中で女が見せてくれた本と同じ本を本棚から取り出し、彼女が指し示したページを開けてみる。すると、そのページから、ひらひらと一頭の白い紋白蝶が立ち現れ、彼の頭の上のあたりをゆっくりと一回りしたかと思うと、窓の外へ飛び去り、やがて遠くへと見えなくなってしまった。
一体、何時、蝶が本の中にはさまってしまったのか皆目見当がつかないが、本の中で彼女が生きていたなんて不思議な話だろ。と言って彼は、小さく笑った。
それは、地球上から蝶が絶滅したというニュースが世界を駆け巡った日から、数ヶ月ほどたった頃に聞かされた話だ。
本当の事なのか、彼の作り話なのかは、僕にはわからない。
見ず知らずの美しい女が彼を呼び止め、自らの家の書架へと導き、そこで見覚えのある一冊の本を手渡した。
彼が「私も同じものを持っています。」と告げると、彼女はその本を開き、真ん中あたりのページを無言のまま指し示し、小さく微笑んで見せた…
そこで、不意に自分の寝室に舞い戻った彼は、今見ていた出来事が夢であった事を知る。
記憶にはないけれど、彼女をどこかで見かけた事が現実にもあったのかも知れないな…。
そうぼんやりと思いつつ、彼は、いつものように窓を開ける。
そうだ、あの本のページ。彼は、夢の中で女が見せてくれた本と同じ本を本棚から取り出し、彼女が指し示したページを開けてみる。すると、そのページから、ひらひらと一頭の白い紋白蝶が立ち現れ、彼の頭の上のあたりをゆっくりと一回りしたかと思うと、窓の外へ飛び去り、やがて遠くへと見えなくなってしまった。
一体、何時、蝶が本の中にはさまってしまったのか皆目見当がつかないが、本の中で彼女が生きていたなんて不思議な話だろ。と言って彼は、小さく笑った。
それは、地球上から蝶が絶滅したというニュースが世界を駆け巡った日から、数ヶ月ほどたった頃に聞かされた話だ。
本当の事なのか、彼の作り話なのかは、僕にはわからない。
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